2018年07月02日

SS「恋する月夜の、」

それは人魚の恋に似ていた。

住む世界が違う、貫くには犠牲を伴う恋。


貴方という酸素を知ったばかりに、海の底にはもういられない。

あの胸の中なら確かに泡になることも厭わない。


貴方の向ける笑顔が私だけのものじゃないとしても。


そうして、ゆっくりこれまでの世界に別れを告げた。



新しい魂が入ったって?」


「ああ、若い娘だね」


「失恋でもしたのかな」


「にしては随分幸せそうだけれど」


同僚から受け取った少女の魂は、まるで子犬のように懐っこかった。


「お前、顔見知りか?」


いつか地上に降りた時に、うっかり声をかけてしまっただろうか。



「月が綺麗ですね」

posted by 亜希子(村蛙、くらぽ) at 01:13| Comment(0) | 散文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月02日

告知です

ご無沙汰しております。

チャットノベルアプリBalloon様にて初の連載、
『無間』(PN:井戸乃くらぽー)が水曜から公開されました。現在Apple Storeでのみ配信ですが楽しんでいただけると幸いです。(1話無料)
今まで全然知らなかった裏社会の話です。
演劇関係の方や英文学に詳しい方ならさらに面白く思ってもらえる趣向です☆
どうぞよろしくお願いします!!m(_ _)m
posted by 亜希子(村蛙、くらぽ) at 01:05| Comment(0) | 補記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月09日

フリーワンライ60分「君は運命の人じゃない」

「君は運命の人じゃない」

ベッドの中でそう言われて、軽く絶望した朝。

貴方の言うことはいつも信用がならないから、きっとそれも確実とは言えない。

「知ってるよ、他にも逢ってる人がいるってこと」

僕は威勢良くシーツから飛び出して制服に着替える。

「だってわかるだろ?」

「そうだね、貴方はいい大人だもの」

サイドテーブルに置いた眼鏡を、貴方の鼻にかける。

「安積先生」


担任教師とこんな関係になってはや半年が過ぎようとしていた。

発端は恥ずかしながら母親の浮気からの両親の離婚だ。突然出て行った母親が残したのは、年端もない小さな妹。

働きづくめの父親は家庭を省みる余裕もなく、僕は一家の家事を担当せざるを得なくなってしまった。

おかげで部活は辞めざるを得ないし、友達付き合いも悪くなる。

けれど、名字が変わらなかったために、僕は一切の説明を誰にもしてこなかった。

理由は、面倒だったから。


そんな僕の唯一の楽しみは、オンラインRPGで顔の見えない相手とチャットすることだった。

そこでよく顔を合わせるタイジという人とは、意気投合したというか、割と世間話以上の話をしていた。両親を早くに亡くし、苦労して大学を卒業していたという話を聞いていたので、僕はいつの間にか兄のように思っていた。


「リリカ、お前今日は大人しいな」

その日、いつものように僕たちはパソコンモニター越しに会話していた。

「実は、家に、居場所が、ないんです」

ややあって、返信。

「えっと、直接、話す?」

「えっ、オフ会ですか?」

「違うよ、お前未成年だろ。音声ってことだよ」

僕も、逡巡の後に返事をする。それは、秘密にしていたことがあったから。

「わかりました」

インカムをゲーム機に繋ぐ。


もしもし」

マイクボタンをONにして、イヤホンに届いたのは、思ったよりやや高めの声だった。

「あの、タイジさんですか、リリカです」

「!」

相手は息を飲んでいる。そりゃそうだ、声を聞いたら一目瞭然、ではなくて、どう言うのかなこの場合。

君は、やっぱり男の子だったんだね」

驚くのは僕の番だった。タイジさんは、今まで僕のことを「お前」と呼んでいたから。


posted by 亜希子(村蛙、くらぽ) at 23:32| Comment(0) | 散文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月04日

新作アップ

先日の朗読ライブ台本『星の溟(うみ) 月の河』(完全版)をはりこのトラの穴様にてアップしました。

posted by 亜希子(村蛙、くらぽ) at 00:07| Comment(0) | 補記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月29日

お知らせ(朗読ライブ

ご無沙汰しています。

急なお知らせになってしまいました!

台本を書かせていただいた朗読ライブが、明日(というか今日)7/29に北参道で開催されます。

(北海道ではなく北参道です←)

もしお時間ございましたら、途中入場もできますのでお立ち寄りいただければ幸いです。

 

菅野秀之朗読ライブ
「響き合うものがたり story 09」
 
開場 18:30、開演 19:00予定
会場: GRAPES KITASANDO (北参道)
地図: kitasando.grapes.tokyo/aboutus/
出演:マホガニー&コア、HAM、梅澤勇気、菅野秀之
 
美味しい音楽と言葉、ごはんにお酒で癒しのひとときをお過ごしください…☆
また、処女歌集『禁断少女』(西村亜希子名義)会場にて頒布しております。
posted by 亜希子(村蛙、くらぽ) at 01:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 補記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月15日

「ふぃーゆ・あんてるでぃっと」46

『好きになることは  素敵なこと』と言う  先生の持つ  唯一の解


posted by 亜希子(村蛙、くらぽ) at 02:48| Comment(1) | TrackBack(0) | 「ふぃーゆ・あんてるでぃっと」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「花街innocence」40

明日など   永遠さえも  見えなくて

それでも主がいる  それだけで

posted by 亜希子(村蛙、くらぽ) at 02:44| Comment(1) | TrackBack(0) | 「花街innocence」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ふぃーゆ・あんてるでぃっと」45

言ってくれ    僕の見てるものがただ夢で    それは楽しい   悪夢なんだと

posted by 亜希子(村蛙、くらぽ) at 02:38| Comment(1) | TrackBack(0) | 「ふぃーゆ・あんてるでぃっと」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月17日

「さん・ぱあ・ゆんぬ」66

「君の事ばかり   描ける筆あれば    ただそれだけで   生きていけたら」
posted by 亜希子(村蛙、くらぽ) at 16:27| Comment(1) | TrackBack(0) | 「さん・ぱあ・ゆんぬ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「花街innocence」39

「狂おしき夜は    明けずに    白いまま外道の道を   ただひたすらに」
posted by 亜希子(村蛙、くらぽ) at 16:25| Comment(1) | TrackBack(0) | 「花街innocence」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする